重度の自閉症の診断を受けた東田直樹さんの本を読んでいる。

会話が出来ない東田さんは、子供の頃にお母さんの工夫による文字盤ポインティングという方法でコミュニケーションが出来るようになり、パソコンを使うことで自分の気持ちを表現する「作家」となった。

絵の才能を認められる人はいても、東田さんのように自閉症で文筆活動を行える人は少ないらしい。

自閉症に対し、特性を端的に表現するために「人の気持ちがわからない」という表現をする場合がある。

自閉症者は、まるで「愛がわからない、感情がない、心がない」とでも言いたげな、この突き放すような酷い言葉を、一般の素人だけではなく、専門機関、医療関係者でさえ使ってきた。

この鈍感で心ない言葉によって、どれだけ多くの誤解を生み、自閉症者やその家族が傷つけられてきたかは想像するに難くない。

東田さんの本は、自閉症という症状を持つ人たちの苦労や気持ちを代弁する本になっているが、それだけではなく詩的な表現の文章力にも引き込まれる。

東田さんの「跳びはねる思考」という自分の気持ちを綴ったエッセイに次の言葉がある。

「僕の気持ちをほんの一部でもわかってくれたら、嬉しくなります。人は話をする時、相手に対して言葉以上のものを受け取ってほしいと、常に願っているのではないでしょうか?

そのために思いが伝わっていないと感じたとたん、心に不満や葛藤が生まれます。
気持ちが十分伝わったと思えたなら、ひと言だけでも満足するはずです。

母は僕が泣くと『つらかったね』『悲しかったね』と言って、よしよししながら抱きしめてくれました。父や姉から、泣くなと注意されたこともありません。母の腕の中で泣きたいだけ泣くことができたのは、本当に幸せでした。

僕の望みは、気持ちを代弁してくれる言葉かけと、人としての触れ合いだったと思います。
どんな自分も受け止めてもらえるという体験ができたからこそ、僕は壊れずに生きてこられたのでしょう」


自閉症の特性は「人の気持ちがわからない」ではなく「コミューケーションがうまくできない」と表現するべきで、コミュニケーションの努力をすべきなのは健常者のほうなのである。


東田さんの存在が、世の中に広く知られるようになったのは、2014年放映のNHKの「君が僕の息子に教えてくれたこと」というドキュメンタリー番組らしいが、なんと東田さんは10年ぐらい前から本を書いている。

12歳の時に書かれた「この地球(ほし)にすんでる僕の仲間たちへ」という本のまえがきには、次の言葉がある。

この本を出そうと思ったきっかけは、僕と同じような障害を持っている子供の気持ちを、少しでもみんなに分かって欲しかったからです。

僕たちはいつも困っていてひとりぼっちなのです。
僕たちを笑わないでください。
僕たちをのけ者にしないでください。
僕たちを助けてください。

この本を読んで僕たちの仲間になってくれたら、僕はとてもうれしいです。
この地球にすんでいる僕の仲間たちへ。
たとえ今がつらくても、生きることをあきらめないでください。
みんなが僕らの仲間になってくれたら、僕らだってこの世界の中で生きていけます。

みんなが分かってくれるように、僕が頑張ります。


「跳びはねる思考」の中のインタビューに

「必要とされることが人にとっての幸せだと考えています。そのために人は人の役に立ちたいのです」


という言葉があったが、12歳の時の決意の延長に今の東田さんの姿があるということがわかった。

電車の中で読んでしまって、不覚にも涙目全開になってしまった・・・