ソルトレークとかトリノオリンピックの時でしょうか?
100名以上の選手団を送ってもメダルを獲得した選手は1〜2名で「やはりメダルを獲得するのは本当に大変なんだ」と思ったものでしたが、ソチでは、いきなり「15歳平野選手18歳平岡選手の銀銅」をとったのを見て、選手層の厚みというか、日本のウインタースポーツがとても成熟しているのを感じました。

見た感じの印象ですが、平野平岡両選手などは、自分の技を披露することを楽しんでいるようで気負いがない。スノボ文化がそうなのかもしれませんが、アメリカっぽい明るさが眩しい感じ。

もちろんフィギュアの19歳羽生選手も素晴しかった!!

10代大活躍!と思ったところで、ジャンプの大ベテラン41歳葛西選手が、銀メダルというのも痛快!

世代を越えた大活躍というのが印象的だった感じ。

まだ、オリンピックは終わっていませんが・・・(笑)

そんななかで一番印象に残ったのは、やはり浅田真央さんでしょうか?

フィギュアという競技は、心境が演技に表れるというか、指先のノビに気持ちが表れるというか、ちょっとした姿勢、所作の違いで素人にもプレッシャーが伝わってくる感じがします。
浅田選手の場合は生真面目なだけに特に、それを感じます。
SP競技大失敗の後のフリーに臨むときの緊張はいかばかりであったでしょうか。
フリーは見事!というしかない感動の演技でした。

「記録より記憶」といいますが、まさにそんな感じ。

日本人選手がメダルをとるのはうれしいですが、メダルは関係なくとも素晴しい感動はあります。

メダルへの期待と言えば、遠い昔の話ですが、マラソンの円谷幸吉選手の自殺の話を思い出します。

円谷選手は亡くなる際に、大変に痛ましい内容の遺書を残し、その遺書はいまだに語り継がれているのです。
検索すると、ウィキペでその全文を読むことができます。

「父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。干し柿 もちも美味しうございました。
敏雄兄姉上様 おすし美味しうございました。」

〜中略〜

美味しうございました。という感謝の言葉が何行も続き

「父上様母上様 幸吉は、もうすっかり疲れ切ってしまって走れません。
何卒 お許し下さい。
気が休まる事なく御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません。
幸吉は父母上様の側で暮しとうございました。」


で終わる遺書。

追いつめてしまった心の痛さが切々と伝わってくる遺書で大変痛ましく、読んでいるとやはり気持ちがこみ上げてきます。

川端康成が「千万言も尽くせぬ哀切」と語り、
三島由紀夫が「円谷選手の死のやうな崇高な死を、ノイローゼなどといふ言葉で片付けたり、敗北と規定したりする、生きてゐる人間の思ひ上がりの醜さは許しがたい。それは傷つきやすい、雄々しい、美しい自尊心による自殺であつた」と名誉を守ろうとした事で、この遺書はさらに有名になりました。

生真面目な浅田真央ちゃんを見ていると、重圧を担った円谷選手のことが思い出されたので、フリーの演技は本当に良かったと思った。

メダルというのは選手の目標であって、国家の目標ではない。

メダルをとった後ならば選手と共に、同胞として素直に喜び讃えるのは良い事だが、当事者でもないのに幼稚なナショナリズムで、事前に変なプレッシャーをかけるのはどうなのか?

メダルメダルと騒いだのはマスコミではあったが、選手団の橋本聖子団長が「金5個を含むメダル10個を取って帰る」「選手にプレッシャーを与えたい。日の丸に恥ずかしくない強い代表になってもらいたい」という事を言っていたとの報道があります。

橋本聖子団長は、競技が終わってから真央ちゃんの演技の事を「メダルは取れなかったが、心に響いた」とか言ってるようですがもう遅い!

政治家であり元オリンピック選手だった橋本聖子氏が、円谷選手の事を知らぬはずはあるまい。

浅田真央さんや高梨沙羅ちゃんをプレッシャーで萎縮させた責任が、団長の態度にあるのではないか。

「プレッシャー発言」が事実ならば、橋本聖子氏の政治家としての適性を疑います。